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- 日々
- 2021/06/09
- 認知症患者の訪問歯科診療
『私は歯科医師として第4コーナーを通過し、まもなくゴールに到着しようとする』と考えておりました。
しかし、最近経験した訪問診療の中で、歯科医業を続けるかぎりは技術・知識の研鑽をしなければならないと痛感することがありました。
開業当初より当院に通院しておられた患者さんが ご高齢の為通院するのが困難となり、自宅に赴き診療をするようになりました。
その後すぐに高齢者施設に入所され、継続して施設での診療をさせて頂くことになりました。
当時は往診の為の特別な時間帯はなく、昼休みを利用して診療しておりました。
入所者の中には当院に通院しておられた方も多く、次第に歯科診療を希望される方が増え、それに伴い医院も訪問診療の為の時間帯・スタッフを充実させていきました。
逆に私自身は現場に赴く事がなくなってしまいました。
ところが、今年4月往診のDrが退職した為、私が現場に戻ることになりました。
ある時、初診患者さんより『旧義歯が破損したので新調してほしい』との依頼があり、診療を始めました。
93歳 認知症の女性です。
訪問診療の経験が浅く、その上医院で行う診療とは勝手が違うので右往左往の状況、同伴してくれる衛生士に助けてもらいながらの診療が始まりました。
1回目の診療:ずーっと 歌を歌いながら・・・でも口は開けて協力的でした。
2回目の診療:概形印象をしました。 少し嫌そうな態度でした。
『お母さんに無駄使いはしてはいけない』 『お母さんが帰ってくる』etc意味不明な事を何度も言っておられました
3回目の診療:精密印象をしました。
上顎は何とか印象することが出来ましたが、下顎は出来ませんでした。
そこで当院のY先生(訪問診療の経験豊富なDR)に日を変えて再印象してもらいました。
4回目の診療:上下の咬合採得予定でしたが・・・完全に拒否され 『噛むぞ!』 と暴言を吐かれました。
また、口腔内のロウ提を自分でむしりとり、ロウ提を破壊する暴挙!
5回目の診療:再度Y先生にピンチヒッターをお願いしました。
彼が診療の様子を動画撮影してきてくれたので早速見せてもらいました。
何と!
患者さんはY先生の指示通り上手に口を開閉しているではありませんか!!!!
感動とショック・・・・『茫然自失』の諺を体験した一瞬でした。
この出来事により、自身が初心に帰り、慢心をいさめないといけないと改めて決意しました。
そして試行錯誤しながらでも次は頑張りたいと思いました。
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